君の声が聞こえる
こんな綺麗な女の子を世の男どもが放っておくはずがないと思う反面、誰のものであっても欲しくなかったのだ。

見たところ、今は一人のようである。僕は意を決して彼女に一歩、近付いた。

「須藤さん」

 彼女の名前は須藤雅巳といった。あれから二日間、彼女の名前はずっと僕の頭にこびりついて離れる事はなかった。

 僕の声に彼女が振り返った。色白の顔に驚きの表情が浮かぶ。

「もしかしたら、入学式の時に会えるかもしれないわね」

 そう言ったのは彼女の方だったが、本当に会う事になるとは思っていなかったに違いない。彼女の表情がそう告げていた。

「ああ、驚いた。確か加藤君だったよね?」

 本当に驚いたように言うから笑ってしまった。

もしかしたら運命かもしれないと思う。こんな風に再会して僕の心を掴んで放さない女の子。

こんな子に出会うのは初めての事だった。

「覚えていてくれたんだ」

「二日前の事ぐらい覚えているわよ。私、おばあちゃんじゃないんだから」

 その言い方がおかしくて、僕はまた笑ってしまった。この須藤雅巳という女の子はクールで綺麗な外見に反して、とても気さくな子らしい。

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