君の声が聞こえる
第二章雅美の本音
複雑な気持ち
(by・良枝)
ある日を境に雅巳の様子が変わった。
それは雅巳が加藤君を避けるようになったのだ。とは言っても、あからさまに避けるような真似はしていない。ただ、静かに心に高い壁を作った、そんな印象を受けた。
一体、雅巳と加藤君の間に何があったのだろう?
気になって仕方ないので、一度、雅巳に聞いた事がある。
「加藤君と何かあった?」
あんなに楽しそうに話していたのに。
もともと二人の仲を妨害していたのは私だったはずなのに、いざ仲違いしてしまうと気になるなんて自分でもおかしいと思う。
「何も。何もないよ」
静かな表情で答える雅巳。まるで用意していたように返ってきた答え。
それ以上の質問を拒むように、視線をそらした雅巳は今まで私の知っている雅巳とは全くの別人のように思えた。私は雅巳に拒絶されながら、高校時代の事を思い出していた。
「俺、須藤さんの事が好きなんだ」
雅巳に告白してきたのは私のクラスで一番人気がある三倉哲夫君だった。その頃、雅巳と私のクラスは、またしても隣同士だった。
こうやって考えてみると私は雅巳と同じクラスになった事は一度もない。