君の声が聞こえる
それに須藤はどう答える?

 須藤は大きな目を見開いたまま、迷っているように見えた。

「私が加藤の事を好きだったとして付き合うとするじゃない?加藤は、いつ死んでしまうか分からない私と付き合って幸せ?」

 この言葉を聞いたのは二度目だ。一度目は良枝から雅巳が告白してきた男に言った言葉として聞かされた。

 試されている。

僕は雅巳に試されている、そう感じた。

「それを言ったら俺も明日、自動車事故で死ぬかもしれない。いつ死んでしまうか分からないのはお互い様じゃないか。俺は、そんな不確かな未来より、今を須藤と一緒に生きたいと思う。俺には須藤は必要だし、須藤にも俺が必要だろ?」

「自意識過剰ね!」

 雅巳の頬が赤く染まっていた。それが僕に答えをくれているような気がする。

「須藤は俺が好きだろ?」

 僕は須藤の柔らかい唇に口付けていた。雅巳は静かに目を閉じた。

 僕はあれほど欲した雅巳の心を手に入れる事ができたようだ。

 雅巳からは、あの甘い匂いがして僕を優しく包んでいた。
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