君の声が聞こえる
そんな私に雅巳は『おいで』とでも言うように手招きした。

　加藤君はそんな雅巳を優しい目で見守っている。

　私はそのまま、フラフラと雅巳の元に近付いていった。

「心配かけてごめんね」

　そう言いながら雅巳は以前と同じ優しさで私を抱きしめた。雅巳からは以前と変わらない甘い匂いが漂っていて、その匂いが私の気持ちを落ち着かせてくれる。

「雅巳、ひどい事を言って……ごめんね」

　雅巳がこうやっていてくれる事が、こんなにも私の心を落ち着かせてくれている事を私は忘れていた。

「良枝、ごめんね」

　雅巳の声が私の耳に飛び込んでくる。この時、私は自分の事でいっぱいいっぱいになっていて、雅巳の口にした「ごめんね」の意味を考えられないでいた。
　
　この時の言葉の意味を理解するのはずっと後になってからの事だった。


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　それからの私達は三人でいる事が多くなった。

　雅巳と加藤君と私。

　加藤君はまるで、私を妹か何かのように接していた。それは時々、胸が痛くなる事ではあったけれど、私はそれを受け入れる努力をするようになった。

　雅巳は前にも増して綺麗になった。
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