君の声が聞こえる
 確かに加藤君の言うとおり、そのシルバーリングは雅巳によく似合う気がした。

シンプルな形だけれど、小さな人工ダイヤが埋め込まれたリングだ。値段も安くはないが、手頃な感じだ。

「そうだね。雅巳、加藤君が選んだって知ったらすごく喜ぶと思うわ」

 加藤君が選んだものなら、それがどんなものでも雅巳は喜ぶだろう。私は雅巳の喜ぶ顔を想像して、微笑んだ。

私の言葉に加藤君が微笑み返してくれる。

「そうかな?」

「うん」

「そっか。それじゃあ、これにしようかな」

 加藤君は私の手を取った。その動作にドキドキする。

「秋山さんの指のサイズっていくつ?」

「十号かな……」

 加藤君は私の指に触れた。加藤君の手は大きくて暖かかった。

「須藤の指って秋山さんよりもう少し細い気がするな」

「そうだね。雅巳は九号だと思うよ」

 言いながら私は雅巳の白い手を思い出していた。雅巳は手のモデルができるほど、綺麗で細い指をしている。雅巳の指は長いのにしなやかで細かった。

「じゃあ、これにしようかな。今、手持ちないんだけど、取って置いてもらえるかな?」

「店の人に頼んでみたら?」
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