君の声が聞こえる
 雅巳の事を一途に想っていて、私の気持ちに気付かない。加藤君が、そういう人でなければ、私はこの人を好きになったりはしなかったかもしれない。

「じゃあ、ご馳走になっちゃおうかな」

 私は加藤君と連れ立って地下にある最近出来たばかりのファーストフード店に向かった。

 最近、このデパートの地下に出来たばかりのその店は、好奇心で訪れた若者達でごった返している。並んでまで、この店に入る必要性はあるのだろうか?

 そう思って加藤君の顔を見ると、加藤君もうんざりしたような顔をしている。

「どうしようか?別の店に行く?」

「そうだな……」

 加藤君の動きが止まった。

息さえするのを忘れて、入り口から店の中をじっと見つめている。

誰か知り合いでもいるんだろうか?

そう思って加藤君の視線の先をたどる。加藤君の視線の先には雅巳がいた。

雅巳はいつものように非の打ちどころのない笑顔を顔に浮かべていた。

定期検査のはずの雅巳がどうしてここにいるんだろう?そんな疑問がわいてきたが、そんな事よりも、もっと気になる事があった。

一緒にいる人は誰だろう?

雅巳は一人ではなかった。見た事のない男の人と一緒にいて、談笑している。
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