君の声が聞こえる
その人は随分、年上に見えたが、背が高くてどことなく加藤君に似ていた。
「須藤……」
加藤君は雅巳の名前を口の中で呟くと、混み合う店内に足を踏み入れた。止める事さえ出来ないぐらい素早い動作で雅巳の元へと進んでいく。
加藤君はショックを受けているみたいだった。雅巳に限って、そんな事あるはずないと思いながらも、まさか、という思いがよぎるのだろう。
「須藤」
雅巳の前に仁王立ちしている加藤君の存在に雅巳は驚きを隠さなかった。加藤君の後ろにいる私を見て「良枝と一緒だったんだ」と小さく呟く。
「須藤、その人、誰?」
加藤君の視線は見ず知らずの男性に向けられていた。もしかして、これから修羅場になるのだろうか?
そう思うと、ちょっと怖い気持ちになった。
しかし、雅巳は表情を変えなかった。いつもと変わらず、ちょっぴり微笑みさえ浮かべている。
「ああ、この人は私の父親。お父さん、この人は私と付き合っている加藤睦月君よ」
あっけらかんと言うから、雅巳の言っている事を一瞬本気にしそうになる。
だって、雅巳のお父さんは雅巳が生まれてすぐに亡くなった、と本人から聞いた事がある。つまり……雅巳が嘘をついた……?
「須藤……」
加藤君は雅巳の名前を口の中で呟くと、混み合う店内に足を踏み入れた。止める事さえ出来ないぐらい素早い動作で雅巳の元へと進んでいく。
加藤君はショックを受けているみたいだった。雅巳に限って、そんな事あるはずないと思いながらも、まさか、という思いがよぎるのだろう。
「須藤」
雅巳の前に仁王立ちしている加藤君の存在に雅巳は驚きを隠さなかった。加藤君の後ろにいる私を見て「良枝と一緒だったんだ」と小さく呟く。
「須藤、その人、誰?」
加藤君の視線は見ず知らずの男性に向けられていた。もしかして、これから修羅場になるのだろうか?
そう思うと、ちょっと怖い気持ちになった。
しかし、雅巳は表情を変えなかった。いつもと変わらず、ちょっぴり微笑みさえ浮かべている。
「ああ、この人は私の父親。お父さん、この人は私と付き合っている加藤睦月君よ」
あっけらかんと言うから、雅巳の言っている事を一瞬本気にしそうになる。
だって、雅巳のお父さんは雅巳が生まれてすぐに亡くなった、と本人から聞いた事がある。つまり……雅巳が嘘をついた……?