君の声が聞こえる
加藤君に言い逃れをするために嘘をついたのか、それとも子供の頃、私に言った事が嘘だったのか分からないが、どちらにせよ、雅巳は私に嘘をついたのだ。
それが私にはショックだった。
何も知らない加藤君は、その男の正体が雅巳の父親だと聞いて明らかに焦っているようだった。
勘違いして雅巳を疑った自分を恥じているようにも見える。
「塩谷と言います。父親と言っても、この子とは今日、十八年振りに会ったばかりなんですよ」
雅巳の父親だと紹介された男は顔赤らめながら、加藤君と握手をするために右手を差し出した。
加藤君も、戸惑ったような表情で塩谷と名乗った男の手を握り返した。
そう言われて見ると、男の目元や口元は雅巳のものにそっくりだ。しかし、世で言う父親の疲れた感じがしないので、父親というイメージからかけ離れている気がする。
この人が本当に雅巳の父親ならば、雅巳が以前私に言っていた事の方が嘘という事になるのだろうか?
雅巳が加藤君の後ろで呆然としている私に気付いた。
「お父さん、後ろにいるのは私の親友で秋山良枝っていうの」
「秋山さん、いつも雅巳がお世話になっています」
それが私にはショックだった。
何も知らない加藤君は、その男の正体が雅巳の父親だと聞いて明らかに焦っているようだった。
勘違いして雅巳を疑った自分を恥じているようにも見える。
「塩谷と言います。父親と言っても、この子とは今日、十八年振りに会ったばかりなんですよ」
雅巳の父親だと紹介された男は顔赤らめながら、加藤君と握手をするために右手を差し出した。
加藤君も、戸惑ったような表情で塩谷と名乗った男の手を握り返した。
そう言われて見ると、男の目元や口元は雅巳のものにそっくりだ。しかし、世で言う父親の疲れた感じがしないので、父親というイメージからかけ離れている気がする。
この人が本当に雅巳の父親ならば、雅巳が以前私に言っていた事の方が嘘という事になるのだろうか?
雅巳が加藤君の後ろで呆然としている私に気付いた。
「お父さん、後ろにいるのは私の親友で秋山良枝っていうの」
「秋山さん、いつも雅巳がお世話になっています」