禁色の囚人~きんじきのとらわれびと~
家に着くなり、部屋に直行。



神楽はいないけど、母親に万が一にも会いたくなくて。



クローゼットの中からスーツケースを出すと、急いで荷物をまとめた。



「…ここから出て行く気になったの?」



ドアから聞こえる女の声。



「アンタの顔が見たくないから。」



一瞬だけ手が止まって。



チラッと母親の顔を見た。



「それだけ?」



カタン…。



ドアが閉まる音がして、母親が部屋に入ってきたのが分かる。



アンタがいなければ、あたしは神楽と一緒にいられたんだから。



言いたい言葉を飲み込んで。

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