禁色の囚人~きんじきのとらわれびと~
「うちは、そこまで波乱に満ちてないけど。お父さんは仕事でいつもいないし、お母さんは絵に描いたような専業主婦。2人が顔を合わせれば、些細な事で喧嘩しかしないけど。それくらいかな?」



思い出すように話してる英里奈。



2人は明るく話してくれてる。



でも…



あたしは殺人者の娘。



自然と目線は自分の足元を見てる。



「神楽さんも少し似てるなって思ったんだ。状況は違っても、本当の親の元じゃないからさ。」



きっと、晴沢は笑顔を向けてくれてる。



顔は見えなくても、声のトーンで眩しいくらいの笑顔が目に浮かぶ。



「そっか。だから、母親が会いに来てくれたら喜んでやれって言ったんだ。」



納得してる英里奈。



「ああ。オレだったら複雑だけど…嬉しいからさ。」



グッと胸の中が重たい。

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