禁色の囚人~きんじきのとらわれびと~
「本当。父親を殺したの。それで、あたしは施設に預けられた。」



ポツリ…ポツリ…



支(つか)えてる言葉が、少しづつ口から出て行く。



その度に恐怖で怯える自分と、心が軽くなる自分が、半分づつ胸の中で同居してる。



「そうか…ごめん。思い出したくもないだろ。」



軽蔑するわけでもない。



ただ、声のトーンが沈んでる。



どこか安心し始めてるあたし。



軽蔑されると思ってたから。



「だから、会いたくなかったのに。今更、母親なんて言われても…それにあんなこと…。」



ギュッとひざの上の両手を握り締めた。



「あんなこと?」



静まり返った空気。



英里奈が小さく聞き返した。

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