禁色の囚人~きんじきのとらわれびと~
「そっか。勿体ないもんな。こんなキレイな黒髪。せっかく、ここまでキレイに伸ばしたんだし。」



そう言いながら、優しく頭を撫でてくれる晴沢。



晴沢の優しさが、撫でてる大きな手から伝わってくる。



「…そうじゃなくて。」

「どうしたの?」



不思議そうな顔をして、首をかしげる英里奈。



「この髪は、神楽の愛情がいっぱいこもってるから。今のあたしは、この髪に触れることでしか、神楽を思い出せないから。2人の気持ちは、凄く嬉しい。ありがとう。」



2人の気持ちが嬉しいのに、切なそうにしか笑えてない。



「そこまで大事に思われるなんて、きっと神楽さんも嬉しいと思うよ。ごめんな。そんな事も知らなくて触っちゃって。」



慌てて頭の上の手をどけた。



晴沢の優しい声に、少し驚いた。



てっきり、もう忘れろって言うかと思ってたから。

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