禁色の囚人~きんじきのとらわれびと~
「ううん。別に…。」


晴沢に何て声を掛けていいか?


分かんないなんて言えない。


「そっか。今日、迎えまで時間あるとか?」

「えっ?何で。」


「英里奈引き止めてただろ?迎えまで時間あって、暇つぶしたいのかと思った。」

「そうじゃないよ。」


なんで、一緒に時間つぶしてって言えないかな?


「そっか。じゃあ、また明日な。」

「うん。」


笑顔で手を振る晴沢に、小さく手を振り返した。


結局、何も言えなかった。


それなのに。


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