禁色の囚人~きんじきのとらわれびと~

「じゃあ、オレは会場に戻るから。」



パタン…



ゆっくりとドアが閉まると、無音の空気が部屋に漂ってる。



部屋を見回すと、掛けてあったコートが目に入った。



誰かの控え室みたい。



「…これ。」



コートを手に取ると、ギュッと抱きしめた。



この匂い。



神楽のコートだ。



この匂いをどんなに待ってたか。



まるで、神楽に抱きしめられてるみたい。



強く強くコートを抱きしめた。



神楽を思い浮かべて。



こんなことぐらいだけど…嬉しくて。



また涙が出てきちゃった。

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