禁色の囚人~きんじきのとらわれびと~


「もう泣くな…キスがしょっぱくなる。」



強く抱きしめられた胸の中。


ドクン

ドクン

ドクン



自分の鼓動じゃない。



この早い鼓動は神楽?



現(うつつ)な幻の間だけ。



今だけでいい…



この熱く響く鼓動をあたしにちょうだい。



体が熱を帯びて、横たわったソファが布地なのに、ひんやりと冷たく背中に感じる。



「しばらく触れてない間に、体が女に成長したな。」


「ダメ…ドレスが汚れる。」



「こんな似合わないドレス、汚れたってかまうものか。」


「似合わないって…。」



ヒドイ。

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