禁色の囚人~きんじきのとらわれびと~

最上階に着いて、ドアが開いて。


ゴクっと息を飲んで。


一歩一歩、社長室に向かった。


…コンコン


ゆっくりとドアをノックした。


まるで、あの時みたい。


母親がきたあの日。


部屋に戻った神楽に会いに行って。


冷たく拒否されて。


あの日みたいに、心が今にも割れてしまいそう。


カチャ…


震える手でドアを開けて。


「神楽?」


つぶやきくらい小さい声。


「なんだ?」


デスクの前で書類を見てたみたい。


振り返った視線が冷たい。

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