禁色の囚人~きんじきのとらわれびと~
「珍しいな?」

「あ…うん。来たらいけない?」


「別に。」



部屋の中に入ると、不思議にも手に汗が滲んでる。



ドクン
ドクン



まるで、好きな人に告白をしに来たみたいに緊張してる。



「今日は、遅かったんだね。」



他愛もない会話をしようとしてる。



その間も、緊張は高まっていく一方。



「仕事が残っててな…。」



書類を見てて、あたしの顔を見てくれない。



「そっか…。」



なんて会話したらいいんだろう?



いつも話なんてしないから。



それに、緊張で頭の中が真っ白。

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