禁色の囚人~きんじきのとらわれびと~
「美緒…元気そうね。」



あたしの両腕を掴むと、すがりつくように泣き始めた女の人。



忘れたくても忘れられない…



あたしの母親。



「何しに来たの?」



冷たく言い放った。



「おととい出てきたの。施設に行ったら、今はここにいるって。」



涙を流した笑顔で、顔を上げた。



「それで?」



「元気そうな顔が見れて良かった。」

「それだけ?だったら帰ってよ。」



「ごめんね。美緒にはたくさん迷惑かけて。」

「殺人犯の母親が、今更来ても迷惑なんだけど。」



住む所も名前も変わった意味がないじゃん。



「そうだよね。でも、どうしても美緒に会いたくて。」

「あたしは、会いたくなんてなかった。」



それだけ言うと、さっさと駅に向かって歩いた。

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