~1day Love minutes~
それぞれの思い
 すっかり重くなってしまった空気を振り払うかのように、衣玖が口を開いた。


「悪かったな、こんな話ししちまって・・・」


「ううん。辛いのに、話してくれてありがとう」


 私は、衣玖の手に自分の手を重ね、心からそう言った。本当にそう思った。同情なんかじゃなく・・・


「こっちこそ、聞いてくれてありがとな。少し、気ぃ楽になったかも」


 そう言うと衣玖は、フっと微笑を浮かべた。


「良かった。でも、無理・・・しなくて良いんだよ?」


 私は衣玖を気遣うように言ったが、衣玖は首を横に振り、顔を曇らせながら笑った。


「大丈夫。ホント、ありがとな・・・」


 その時、ほんの一瞬だったが、衣玖の頬に光るモノが流れた気がした。


 ここでも…と、自分の無力さに、私は落胆した。




 
 


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