雨降らずとも


酒好きな高野が、渡されたそれに手も付けず
真面目にうなだれているのを見ていたら
悪いはずなんかないのに
なんとなく罪悪感が湧いちまった。


…アホらし。


「…高野も純情だね」
「うっせ。お前程ひねた恋愛の仕方はしないってだけだっつーの」
「俺のどこがひねてんだよ?」
「男も女も構わずふらふらふらふら。気を引きたいならもちっとまともな方法あんだろ」

ようやくビールを手にした高野。
今度は俺がそれを手放して
高野に向けかけた視線を元に戻し俯いた。


「…そーいうんじゃねぇよ」
「違ぇの?」
「別問題。大体そんなんでアイツの気が引けると思うか?」
「…それもそうだな」


高野ともアイツとも
専門時代からの付き合いで
アイツの事は高野もよく知ってる。

俺の気持ちにも
高野はすぐ気付きやがった。

…故にムカつく事も多いけど。


「…俺行くわ」


飲みかけのビールをテーブルに置いて
俺は立ち上がった。


「ほぉ」
「なんだよ」
「帰るじゃねぇんだな」



…ニヤニヤとやらしい笑み浮かべて
高野が嫌なとこ突つく。

「そろそろ帰って来る頃か」
「…うっせ」
「よろしく言っといてくれ」
「ったく…じゃな」
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