君を愛す ただ君を……
「誰?」

越智君が、あたしに視線を戻すと聞いてくる

「従兄だよ。どうしてここにいるんだろう?」

あたしは大ちゃんを見ながら、越智君に説明をする

「陽菜、おばさんが心配してるぞ」

「うん。ごめん。ちょっと友達とお茶をしてたら、遅くなっちゃって」

「友達?」

大ちゃんの視線が、越智君に向いた

「同じ高校の越智君だよ。しぃちゃんっていうあたしの友達の彼氏。最寄駅が一緒なんだ」

「越智愁一郎君だよね? はじめまして。岡崎です」

大ちゃんの顔を見て、越智君がハッとした表情になった

「おかざきって…もしかして短距離走の?」

越智君に言葉に、大ちゃんがにこっと微笑んだ

「越智君、どうして君は陸上をやらないの? 君ほどのプレイヤーが続けていないなんて、不思議だよ」

「あ…俺は、もう」

越智君が苦笑した

「どうして? ぜひやってもらいたい…いや、やってもらうよ。僕が来たからには、部活に入ってもらう」

「は?」

「え?」

あたしと越智君が同時に、声をあげた

「大ちゃん、もしかして…明日からの新しい先生って」

「そうだよ。僕が、陽菜がいる高校に転任したんだ」

大ちゃんは越智君の顔を見たまま、にやりと笑みを見せた

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