君を愛す ただ君を……
くすっと満足そうに笑う越智君のお母さんを横目に、あたしは家に引き返し始めた

こんな大金を持って、学校になんて行けない

あたしは胸に何かが詰まったような感じがすると、どわっと涙が頬を流れていった

嗚咽が漏れ、視界が涙でゆがんだ

越智君ともう会えなくなるという悲しさと辛さ

越智君のお母さんに、一人の人間として扱ってもらえなかった悔しさ

大金と恋心を天秤にかけて、恋を選べなかった自分への惨めさが入り混じって、あたしの全身を駆け巡る

手術を受けて元気になっても、あたしは越智君に会えない

約束したクリスマスのデートもできない

越智君が好き

あたし、越智君が好きだよぉ

胸を張って、越智君が好きって言えるようになったのに、もう言っちゃいけないんだね

あたしは、越智君との恋を取るより、自分の命を取った卑怯な女だ

ごめんなさい、越智君

あたし、それでも越智君が好きだよ

今日で最後にするから

越智君との恋愛を、今日でお終いするからね

素敵な想い出を作らせて

越智君は素晴らしい人だったって、思って別れたいから

あたしは涙を流しながら、家の門をくぐった

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