君を愛す ただ君を……
「でも駄目ね。お金がないから…手術が受けられないなんて。越智君のお父さんにね…越智君の大学が決まるまでは、生きてて欲しいって言われたのに。受験に失敗して欲しくないから、何としても大学が決まるまでは治療を受けて欲しいってお願いされたのに。その約束すら守れないかも」

あたしの言葉に、越智君がゆっくりと顔を起こして、口を動かした

「どういう意味?」

「お金はやっぱり返すよ。越智君に嫌われたくない。手術を受けられなくてもいいの。でも越智君と離れたくない」

「涼宮…いいのかよ」

「もとは言えば、越智君ともっと一緒に居たいから受けようって思った手術だもん」

越智君が立ち上がると、嬉しそうに笑顔を見せてくれる

その笑顔に、あたしの心もほっとする

「信じらんない。馬鹿らしっ」

しぃちゃんがぷいっと横を向くと、不機嫌そうに足音を鳴らしながら、離れて行った

「しぃちゃん、ごめんね! でもあたし、越智君が好きなの」

歩道まで出たしぃちゃんが足を止めると、くるっと振り向いた

「知ってるよ。私こそ、ごめん。二人の仲を疑ったりして…てか、私が邪魔者だったのにさ。陽菜にたくさん意地悪して、ごめんね」

しぃちゃんが居心地の悪そうな笑みを浮かべながら、手を振ると、クラスメートの女子たちと去っていった

しぃちゃん……ごめんね

しぃちゃんも越智君を好きなのに

「涼宮、今日はもう少し一緒に居たいんだけど…いい?」

越智君が、あたしの腰に両手を回すと、額にキスを落とした

「え? あ、うん」

「どっか二人きりで話せる場所に移動しよう」

越智君の言葉に、あたしは頷いた

カラオケボックスにでも行くのかな? くらいにしか思ってなかったし、越智君が何を考えているのか…あたしにはさっぱりわからなかったから

ただお母さんの話をするのに、他人の目があるのが嫌なのかと思ったの

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