君を愛す ただ君を……
「大ちゃん……」

越智君のお母さんが階下に降りて行くのを見送ってから大ちゃんがゆっくりと振り返った

大ちゃんが足を折ってしゃがむと、あたしと同じ目線の高さにしてくれた

「詳しくは知らないけど、しばらく越智と距離を開けるべきだと思うよ」

大ちゃんがあたしの頭を優しく撫でてくれた

「大ちゃん、あたし…」

あたしの目頭が熱くなると、じわっと涙があふれた

怖かった

越智君のお母さんの顔が、憎しみでいっぱいで、あたしを嫌っているのがよくわかった

大ちゃんがいなかったから、あたし…越智君のお母さんにもっと叩かれていたと思う

「陽菜、心に溜めていることがあるなら、言ってごらん」

「大ちゃん」

あたしは大ちゃんに抱きつくと、胸の中でおお泣きをした

声をあげて泣くあたしの背中を、大ちゃんがそっと撫でてくれる

「あたし、ママたちの話を聞いちゃったの。手術代が無いって。でも大ちゃんと婚約するなら、手術代は平気だろうって言うパパに……どうしたらいいかわからなくなっちゃって」

「それで、越智の母親からお金を貰ったんだ。そんなに僕と婚約するのが嫌?」

「違う…大ちゃんは嫌いじゃないけど」

あたしは言葉を失った

何をどう言ったらのいいのかわからなくて、言葉が出てこなかった

「越智と別れるの?」

「わかんない。越智君は、金は貰っとけって。自分が家を出ちゃえば、あたしと越智君のお母さんのとの約束は無効だって。俺が諦めなければ、それでいいんだって言ってたの。でもね…越智君には、許嫁がいるみたいなんだ。越智君には言ってないって、お母さんが言ってたけど。越智君のお母さんの中では、お嫁さんにする人が決まってるから、越智君を惑わして欲しくないって思ってるみたい」

あたしは大ちゃんの服の袖をぎゅっと掴んだ

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