君を愛す ただ君を……
「越智はあの病院の跡取りだからね。両親のしがらみが強いんだと思う。その点、僕はそういうのが無いよ。継ぐ家業もないし、まあ、越智の家みたいに贅沢はできないけど…」

大ちゃんが優しい声で、あたしの耳元に囁いた

「ズルい。こんなときに言わないで」

「こんなときに言わないと、陽菜は越智を選ぶでしょ」

「それがズルいって言うの」

「陽菜の答えは?」

「大ちゃんなんて嫌いよ」

あたしは大ちゃんの背中に手を回すと、ぎゅっと抱きついた

「陽菜、幸せにするから」

大ちゃんの言葉と身体があたしを温かく包み込んでくれる

「越智の居場所は知ってるの?」

「うん」

「そっか。じゃあ、僕から越智に説明をするよ」

あたしは大ちゃんから離れると、唇を噛みしめて首を横に振った

「越智君、怒るよ」

「わかってるさ。陽菜はどうしたいの? 越智のお母さんに怯えながら、越智と付き合い続けるの? 付き合えると思ってるの?」

あたしは首をまた横に振った

「なら、越智にはきちんと別れを告げるべきだよ」

「わかってる…けど、越智君が好き。好きだけど、離れたくないけど…離れなくちゃで…」

「だから、僕が言いに行くよ」

あたしは大ちゃんの手をそっと握った

「大丈夫。自分で言うよ。明日、言いに行く」

「わかった。ついて行くよ」

大ちゃんがあたしの頭を撫でると、にっこりとほほ笑んだ

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