君を愛す ただ君を……
越智君が「ちっ」と舌打ちをした

「約束なんてもう無意味だろ。俺は涼宮と居たいから、親と約束をした。涼宮が俺の隣に居ないのに、頑張る必要なんてない」

「越智君、そんなふうに言わないで」

「じゃあ、なんて言えばいいんだよ。俺は涼宮と一緒になれなくても、一人で生きていけるととでも言えば、涼宮は満足するのかよ。無理だろ…そんなの。言えるわけがねえ。好きなヤツと離れても、一緒になれなくても、『好き』っていう感情だけを胸に抱いて、頑張れるかっつうの」

越智君があたしから離れると、ベッドにどすんと尻を落とした

頭を抱えて、苦しそうな表情をしている

「…なんでこうなるんだよっ。どうして好きって気持ちだけじゃ駄目なんだよ」

越智君は「くそっ」といら立ちを言葉に帰ると、左足で床を蹴った

「ごめんね」

「謝るなって言ってるだろ」

越智君があたしを睨んだ

「だって……」

「謝るなよ。俺たちの感情が間違ってるって気になるだろ。俺たちは間違ってない。俺のこの感情に、嘘いつわりなんてねえんだよ」

「越智君、ごめんなさい。あたしがもっと強ければ……」

あたしはベッドに座っている越智君の頭をそっと両腕で包み込んだ

「だから…謝るなって」

「心臓に疾患がなくて…お金のある家だったら良かったのに」

「関係ねえよ。そんなの」

「越智君、お医者さんになって。あたしみたいに心臓に疾患を抱えて苦しんでる人たちを一人でも多く救って欲しい。あの病院を潰して欲しくないよ」

越智君の手があたしの腰に回った

「…気が向いたらな」

越智君が小さな声で呟いた

越智君なら、絶対に優秀なお医者様になれるよ
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