君を愛す ただ君を……
「この子は愁一郎の彼女だろ」

越智君のお父さんが、何を言っているんだ?と言わんばかりの表情をする

「やめてよ。こんな子が愁一郎の……なんて考えたくないわ。それにもう別れたのよね?」

「え?」

「ねっ!」

越智君のお母さんがあたしに振り返ると、キッと睨みつけてきた

あたしは慌てて頷くと、越智君のお父さんに視線を動かす

もしかして、越智先生は何も知らないの?

あたしが、越智君のお母さんからお金を貰って、越智君と別れたって

「愁は彼女と付き合うために期末で学年1位になったんじゃないのか?」

「そんな馬鹿げた理由で、成績を左右して欲しくないわ」

越智君のお母さんが、ぷいっと横を向いた

「それにね。愁一郎には恋愛なんてまだ早いのよ。この女に騙されているんだわ」

お母さんの言葉に、越智先生の目がスッと細くなった

「お前、息子の言葉も信じられないのか? 愁が騙されるような男だと思っていたのか?」

「アナタは子育てもしないで、こんなときにだけ寛容な父親ヅラするの?」

「子育てに協力的ではなかったが、愁の父であるのに変わりはない」

「何よ、それ…。患者の前だからって、強がらないで頂戴」

「そうだ。患者の前なんだから、お前こそさっさと家に帰れ。愁はここにいないのだろ。どうせお前の勘違いで、家にいるのに彼女のところに来ていると早とちりしてるだけなんだ」

「違うわ。絶対にここに来ていたわ」

「あ…あのぉ」

看護師の一人で、電話を子機を持って申し訳なさそうに言い争っている二人に声をかけた

< 128 / 507 >

この作品をシェア

pagetop