君を愛す ただ君を……
「そんなに緊張しないで。愁の父として、少し話をしたいなあって思っているだけだから」

先生が苦笑して、肩をすくめた

「どうやら、私の知らないところでいろいろと起きているみたいだから。愁と別れたって本当?」

あたしは頷いた

「テスト返却日の翌日に、別れました」

「どうして? 愁は君のことをとても大事に想っているよ」

「越智君のお母さんに、別れて欲しいとお金を渡されました。あたし、手術代が無くて困ってたから、つい……すみません」

あたしは頭を下げた

「お金のことなら、相談してくれればいいのに」

「それに越智君には、越智君に相応しい許嫁の方がいらっしゃるって…」

「なんだそりゃ?」

越智先生が、目を丸くした

「相応しいって…君も十分、相応しいでしょ? 愁が君を選んだ時点で、相応しいんじゃないの?」

越智先生が、不思議そうに首を傾げた

越智君と先生の思考回路って似てるんだね

声も考え方も似ていると、まるで越智君と話しているみたいな気分になる

「越智君のお母さんはそうは思ってないみたいで…」

「ああ…そうか。そういうことか。それで君と愁が別れたわけだね。愁は納得してるの?」

「さあ…どうでしょうか」

「家に愁の姿が見当たらなくて、あいつが部屋に乗り込んできたわけね」

越智先生は納得した顔で腕を組むと、何度も頭を頷かせていた

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