君を愛す ただ君を……
「書類をガバッとあげて、ブチューってキスをして『このカステラ、美味しいね』って。研修一日目の医師が、主任看護師を押し倒しちゃってすごくなーい?」

更衣室で、マキちゃんが意気揚々と話をしている

大きな声で話してて、他の看護師にも丸聞こえ状態だ

「マキちゃん、声が大きいよ!」

あたしはマキちゃんの腕にそっと手を置く

「すごいよねえ。今年の研修医に期待できそう」

レイちゃんが、化粧を直しながらニヤッと笑う

これからマキちゃんと越智君がセッティングしたコンパに行くから、皆、気合いを入れている

突然のコンパなのに、みんなロッカーにしまっておいた勝負服を来て、化粧も念入りにしている

すごいのは、レイちゃんやマキちゃん、ミサキちゃんだよ

今日の午後に決まったコンパなのに、どうして勝負服を持っているのか

いつコンパが入ってもいいように

いつ男性にデートを申し込まれてもいいようにロッカー内の中に、勝負服と勝負下着をしっかり入れておくなんて…用意周到すぎて、尊敬しちゃう

あたしなんて、どうせ寮と病院の往復だからって、すごい軽装なんだけど

履き古したジーパンだし、靴もヨレヨレだし、コート着ちゃうからと思って、セーターも毛玉とかちょっとあるし

気合いの入ってる人たちと並ぶと、なんとも薄汚れた格好で、少し惨めな気分になるよ

せっかく、7年ぶりに越智君と会うのに、もうちょっとおしゃれをしたいかな?なんて思っちゃうよね

「研修医と主任って知り合いなんですか?」

携帯をいじりながら、ミサキちゃんが質問をしてきた

ミサキちゃんは、携帯でコンパの店の予約をしてくれている

「うん、まあね。高校1年のとき同じクラスだったの」

「ええ? おな高の人? もしかして元彼とか?」

ミサキちゃんが、ぱっと携帯を目を離して顔をあげると、目を輝かせた

あたしは苦笑すると、肩を竦ませる

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