君を愛す ただ君を……
「身体は平気? 倒れそうなんだけど」

「体力だけは無駄にあるから。…てさ、聞いたぜ。研修医にいきなりキスされたんだってなあ。レイが教えてくれたぞ」

「ちょっと…やめてよぉ。言いふらさないでよ? すんごい恥ずかしかったんだから」

「主任がキスされたら、立場がねえもんなあ」

海東君がけらけらと面白そうに笑い声をあげる

「だからやめてってば」

「んで、そいつらとコンパするんだろ? いいよなあ。女子の看護師はさ。研修医を誘っても別に違和感ねえもんなあ」

海東君が、羨ましそうな声をあげた

「海東君だって、女性の研修医に声をかければいいんじゃない?」

「嫌だよ。女医って怖いもん。『私が、看護師の男と出かけるわけないでしょ』って言われるのがオチだよ」

「なんかリアルだね」

「実際に言われたんだよ! 悪かったな…看護師の男で」

「ちょっと、あたしに当たらないでよ」

あたしは海東君の背中をバシッと叩いた

「で? どの先生?」

「救急医療センターの軽部女医」

海東君が、肩を持ち上げて首を振った

「レベル高いね!」

「うるせんだよ。仕事のあがりが一緒だったから、茶でもどうですか?っつったら、突っぱねられたんだよ」

「可哀想」

「だろ?」

「違うよ。軽部先生が可哀想なの」

「んだよ、それ」

海東君が、不満そうな顔をしてあたしのわき腹を肘で突いた

「冗談だよ」

あははと二人で笑い合っていると、あたしの前に大きな影ができた

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