君を愛す ただ君を……
あたしはレイちゃんのコートの袖を引っ張った

越智君と軽部先生がくるっと振り返った

「あら、誰かと思えば外科の看護師さんじゃない」

軽部先生がさらに越智君に密着してきた

「女同士で酒盛りでもしてたの? 寂しいアフターファイブね」

軽部先生の軽い嫌みに、レイちゃんの眉がぴくっと反応した

「いいえ。さっきまで男性たち一緒に飲んでたんですけどぉ」

「じゃあ、その男たちに振られたのね。こんな早い時間から女二人で街をぶらつくなんて可哀想な人たち」

私には彼氏がいますから…と言わんばかりに軽部先生がぎゅっと越智君に密着した

越智君は無表情であたしの顔をじっと見つめていた

「いいえ。他の男たちにもナンパされちゃって…好みのタイプでもないしぃ、抜けてきたんですよね。モテる女ってホント大変で。その点、一人しかいない軽部先生は、選ばなくていいからいいですよねえ」

負けじとレイちゃんが、眉をぴくぴくと動かしながら発言した

嘘をついても、レイちゃんは軽部先生には負けたくないらしい

そうだよね

海東君が好きかも知れない先生だもん

張り合いたくなるよね

「あら、魅力的な男がまわりにいないなんて、アナタたちのほうが可哀想だわ」

「可哀想なんて…魅力的な男がまわりに多くいすぎて、引く手数多なんですぅ。先生みたいに男を誘うような下品な格好をしなくても、私たちって魅力的だから」

レイちゃんが長い髪を、揺らしてにっこりとほほ笑んだ

「ナンパ?」

越智君がぼそっと呟く

少し怖い顔になった越智君が、じろっとレイちゃんを見た

「そうよ! 誰かさんが約束を破るから。ちょー、大変だったんだから。変な男に連れ去られそうになって」

「本当?」

「じゃなきゃ、さっさとお開きになんかしないわよ」

レイちゃんが、キッと越智君を睨んだ

ああ、もうっ!

レイちゃんったら、嘘ばっかり言わないでよぉ
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