君を愛す ただ君を……
「なあに?」

越智君が首をかしげている

「その…えっと、着古した服で、ヨレヨレで。全然、おしゃれじゃないっていうか。あまり見られたくないっていうか」

越智君が、肩を揺らして失笑した

「気にしないよ」

「あたしが気になるの。それに仕事が終わって、そのまま飲みに行ったし、身体が汚いっていうか…なんていうか」

「なら、風呂に入る? 使っていいよ」

「あ…その…。お願いっ。あたしの気持ちもわかってよ」

「わかるけど。俺の身体のことをわかって欲しいなあ」

越智君がにっこりと笑うとコートの隙間から、すっと手を入れた

「ちょっと!」

「コートの中を俺が見なければいいんでしょ? なら触るなら、問題ない」

「ええ?」

越智君がコートから手を出すと、あたしの頭を撫でた

「冗談だよ」

越智君は身体を起こすと、黒の革靴を脱いで家にあがった

「温かい飲み物でも用意するよ」

越智君が廊下をまっすぐに歩いて、奥の部屋に進んでいった

あたしも身体を起こすと、はあっと息を吐き出した

びっくりしたぁ

越智君って、男なんだよねえ

忘れているわけじゃないんだけど…なんか、ちょっとどうしていいかわからなくなるよ

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