君を愛す ただ君を……
3年前にそうやって大ちゃんに抱きつかれていたら…きっとオッケーって言ってたと思うよ

だって大ちゃんが初恋の人だったから

陸上にかける熱意に、あたしはすごいなって思ってた

大ちゃんに憧れてたよ

でも今は違うの

今は…越智君がいい

「ごめんね…大ちゃん」

「その言葉も、聞いてないことにする」

大ちゃんがポンポンと頭を叩いた

「越智愁一郎…やっぱ欲しいな」

「え?」

大ちゃんの言葉に、あたしは目を丸くした

「あいつさ…すげえいいフォームしてるんだ。鍛えたら、もっと早くなる。俺の高校の新記録を破れる選手になれると思うんだよ。絶対に落とす!」

大ちゃんが、拳を握るとコクンと頷く

「そうそう、大ちゃんはそうじゃなくちゃ。いつも頭の中は陸上一色」

あたしは立ち上がりながら、口を開いた

「酷いなあ。僕だって、将来のことを考えるときだってあるさ」

「あたしの中の大ちゃんは、陸上馬鹿だよ」

大ちゃんが口の端を曲げると、肩を持ち上げた

「僕だって、いろいろと考えてるよ」

「じゃ、おやすみなさい」

あたしは大ちゃんに告げると、部屋を出て行った

大ちゃん、ごめんね

あたし、越智君が好きだから

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