君を愛す ただ君を……
深夜零時、あたしは越智君に女子寮の前まで送ってもらった

「あ…そうだ。仕事場では、二人の関係は秘密だよ」

「なんで?」

越智君が不思議そうな顔をした

「隠すつもり…もしかして、無かった?」

「無いよ。隠す必要がどこにあるんだよ。やっと涼宮と堂々と付き合えるんだ。誰に反対されるわけでもないのに、コソコソする必要なんてないだろ」

「する必要があるの!」

「どこに?」

越智君って、自分がまわりからどんな風に見られているかって全然に気にしないんだもんなあ

「あたし、軽部先生に恨みを買いたくないよ」

「はあ? あの人とはなんでもないって話しただろ」

「越智君にその気はなくても、軽部先生にはあると思うよ。どんな手を使ってでも、越智君と結ばれたいって思ってるはず。じゃなきゃ、レストランに誘わないでしょ?」

「まあ…そうだろうけど」

越智君が納得いかない顔で耳の後ろを掻いた

「仕事場では、研修医と看護師だからね」

「やっと涼宮と付き合えるのになあ。仕事場ぐらいしかゆっくり会える場所がないのに」

越智君が頬を膨らませながら、ブツブツと文句を呟いた

「仕事場は恋愛をする場所じゃないよ」

「わかってるよ。でも…人目を盗んでキスくらいはできるだろ」

「しないの」

越智君は口をへの字に曲げると、不満そうな顔をした

「プライベートのときに、たくさんキスしていいから」

「本当?」

「う…うん」

「じゃあ、次に会うときは勝負下着と勝負服で!」

「え?」

「だって、今日はコートすら脱いでくれなかっただろ」

「あ…まあ、そうだけど」

越智君が、にっこりと嬉しそうな顔をすると、あたしは恥ずかしくて下を向いた

勝負下着も、勝負服もあたし、持ってないし……
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