君を愛す ただ君を……
あたしが部屋に戻ると、携帯が鳴っていた

机の上に乗っている携帯には、しぃちゃんの名前が表示されていた

「もしもし?」

『ちょっと、聞いてよー。愁ったら酷いんだよ。陽菜と別れてすぐに、「あ、ビデオの予約忘れてた」とか言って、ドアが閉まる直前にひょいって降りたの! いつもなら、家まで送ってくれるのに。酷いと思わない? ちょー、冷たい』

電話の中で、しぃちゃんが一気に不満を吐き出した

『はあ…すっきりした。陽菜、聞いてくれてありがと』

「ううん」

ほとんど一方的に話しているのを、耳に入れてるって感じだったけど…しぃちゃんがすっきりしたなら、良かった

『もう少しで付き合って一年になるのになあ。最近の愁はどこか冷たいんだよね。部活してるわけじゃないのに、土日のデートを嫌がったり。放課後だって、よく寄り道してたのに…全然、寄り道もしなくなって。携帯に電話しても出る回数も減ったし』

それは…越智君が内緒でバイトしているからだと思う

しぃちゃんとクリスマスを過ごすために、きっと頑張ってるんだよ

でも秘密にしててって言われてるから、口にできないけど

越智君はしぃちゃんのために、頑張ってるんだよ

「越智君、きっと……」

『付き合って一年もたつと、気持ちもきっと冷めるんだろうねえ』

「そんなことないよ。越智君、しぃちゃんを大切にしていると思うよ」

『そうかな? なんか最近は、気持ちの温度差を感じる。私が告白して、無理やり付き合ってもらったようなもんだし…』

「そうなの?」

知らなかった

てっきり越智君が告白したんだと思ってた

あたしは耳に携帯をつけたまま、ベッドに座った

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