君を愛す ただ君を……
男たちの想い
あたしは海東君からもらったファイルを持って、医師がいる部屋に行った

「失礼します…あれ?」

誰かしら室内には先生がいると思っていたのに、部屋には越智君しかいなかった

休憩中だったのか、越智君は白衣を脱いで、分厚い医学書とにらめっこしながら紙パックの野菜ジュースをストローで啜っていた

「涼宮、どうした?」

「あ…センターからこっちに引継いた患者さんのファイルを届に来たんだけど…」

「皆、出払ってるよ。俺がファイルを預かっておくよ」

「ん、お願い」

あたしは越智君にファイルを渡した

「今夜なんだけど…」

越智君が口を開いた

「ごめん。行けないよ」

あたしは首を横に振った

「なんで? だって夕方までだろ?」

「ん、そうなんだけど。急きょ、異動になったの。センターの夜勤に。だから今夜は無理…というかこれからずっと夜に会うのは無理かな」

「んだよ、それ」

越智君の目がスッと細くなる

あたしの手首を掴むと、不機嫌な顔であたしを見つめてきた

「怒らないでよ。あたしだって、さっき異動命令がきたんだもん」

「涼宮が夜勤になったら…俺ら、ずっと会えないじゃん」

「越智君が夜勤当番で翌日が休みになれば…会えるかもしれないね」

あたしは肩を持ち上げた

「それっていつ?」

「わからないよ。それに来月からあたし…支部に異動だから」

「はあぁ?」

越智君が机に肘をつくと、ペチンと額を叩いた

「何のために第一外科に来たのか……無意味じゃん」

「そんなこと言われても。上からの命令だから、あたしには何もできないよ」

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