君を愛す ただ君を……
「上から?」

越智君が、聞き返してきた

あたしが頷くと、越智君の視線が遠くになった

顎を指でなぞってから、「ふぅん」と越智君一人で納得した声をあげる

「まったく嫌になるなぁ。これだから中途半端に力のあるヤツって嫌いなんだ」

越智君が、椅子の背もたれに寄りかかると、息を吐き出した

「来月から支部って言った? なら寮を出るの?」

「うん…たぶん」

「じゃあ、俺んとこに来て。会えないなら、一緒に生活をしたい」

「ん、わかった。両親に話をしてからだけど…いい?」

「いいよ。挨拶に行けなくてごめん」

「仕方ないよ。一緒に休めないんだから」

越智君が、申し訳なさそうな顔をした

「ごめん。俺が中途半端な位置にいるから…涼宮に嫌な思いをさせてる」

あたしは首を横に振った

「越智君は医師として頑張ってるよ」

「すぐに偉くなって、涼宮を第一外科に引き戻すよ」

「その前にレイちゃんを外科に戻してあげて。あたしのとばっちりで、小児科に異動になっちゃったの」

「レイちゃん? …って、ああ、昨日の威勢の良い涼宮の同僚か」

「レイちゃん、子供が嫌いなんだ。苦手っていうか……怖いっていうか。詳しくは知らないけど、なんかトラウマがあるみたいなの」

「わかった」

越智君がにっこりと笑ってくれた

越智君があたしの腕をくいっと引っ張ると、座ったまま、あたしにキスをした

「昨日、無理やりコートを脱がせた良かったかなあ」

越智君がにやりと意味ありげに笑った

「ちょっと! 越智君っ」

くすくすと越智君が肩を揺らして笑った

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