君を愛す ただ君を……
救急医療センターでの初日の夜をなんとか乗り切ったあたしは、眠い目を持ち上げて、第一外科のナースステーションに足を運んだ

今まで置いてあったあたしの荷物を取りに行くと、レイちゃんがナースステーションに座っていた

「あれ?」

あたしは首を傾げると、レイちゃんが嬉しい顔をしてあたしに抱きついてきた

「ありがとー、陽菜がどうにかしてくれたんでしょ?」

「え?」

あたしはレイちゃんの言っている意味がわからずに首を傾げた

「異動の取り消しだよ」

「知らないけど」

あたしはレイちゃんのハイテンションについていけずに、欠伸をした

「え? 陽菜じゃないの?」

あたしはコクンと頷くと、ポンと手を叩いた

「もしかしたら、越智君かな?」

あたしがぼそっと呟くと、頭がきゅうに重くなった

「俺じゃないよ」

越智君の腕があたしの頭上に乗っかると、越智君の声が聞こえた

「おはよう。涼宮主任」

「あ…おはようございます」

あたしは越智君にぺこっと頭をさげた

なぜだろう…あたしのほうが勤務歴も長し、主任なのに…越智君のほうが断然、偉そうに見えちゃう

「越智先生じゃないんですか?」

レイちゃんが初めて、越智君の名前を呼んだ

「俺、何もしてないよ。異動の件については一言も文句は言ってない」

…てことは、異動以外の件では文句を言っているのね

越智君、まだ研修医なって3日しか経ってないのに…強気な態度はどうかと思うよ
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