君を愛す ただ君を……
「なんかその言い方って、他の件では文句を言ってるの?」

レイちゃんが越智君に突っ込みを入れると、越智君が苦笑した

「まあ…それなりに。疑問に思ったら、とことん追求しないと気がすまないから」

「ひゃあ…怖い先生だぁ」

レイちゃんが飛び跳ねがらあたしの後ろに隠れた

「怖いって…それって失礼じゃねえの?」

越智君が口をへの字に曲げた

「でも誰が、異動の取りやめに貢献したんだろう」

あたしがぼそっと呟くと、バシッと堅いもので叩かれた

「いたっ」

「第一外科に行くときは、これを持っていけっつっただろ」

振り向くと海東君が、ファイルを持って立っていた

どうやらあたしは、ファイルで頭を叩かれたっぽい

「あ…ごめん」

あたしは頭を撫でながら、海東君に謝った

「…たく、頼むよ、主任さん」

海東君はファイルと横に立っている越智君に差し出した

「引継ぎお願いします。この患者、心臓に先天性の疾患がある方で、薬の投与にはくれぐれも注意をってことです」

海東君から受け取ったファイルに目を通した越智君が、頷いた

「わかりました。担当医に伝えておきます」

「…て、ことだからレイ、頼んだぞぉ。んじゃな」

海東君が、レイちゃんの前髪をくしゃくしゃにするとナースステーションを出て行った

え? なんで海東君が、レイちゃんがここに残るって知ってるの?

あたしは海東君の背中を見つめてから、越智君の顔を見た

「ごめん…また、荷物を纏めに来るから」

あたしは海東君の背中に視線を戻すと、走り出した

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