君を愛す ただ君を……
あたしは久々に実家に帰った

家にはママしかいなくて、昼間に帰ってきたあたしにママはひどく驚いていた

「え? 来月から?」

ママが温かい紅茶をいれてくれる

あたしはマグカップの取っ手を掴むと、「ふう」と湯気に向かって息を吐いた

「うん。支部の救急医療センターってところに異動が決まったの。朝方まで、大学病院のほうのセンターで夜勤をやったんだけど…すっごく大変なところだった。でも充実感のある場所でもあったよ」

あたしはママに笑顔を見せると、ママが心配そうな顔であたしを見ていた

「勤め場所が変わるなら…寮はどうなるの? 支部の近くにも寮があるのかしら? それともここから通うほうが近いの?」

ママが紅茶を飲んだ

あたしはごくりと唾を飲む込むと、マグカップの取っ手を掴んでいる指先に力を入れた

「そのことなんだけど……」

「あ、もう住む場所の目星がついているの?」

何も知らないお母さんが、にこにこと笑っている

なぜかあたしは、胸の中がチクチクと痛んだ

深呼吸をしてから、あたしは意を決して口を開いた

「あのね…支部に異動で寮も出なくちゃなんないし、ちょうどいいかなって思って…その、えっと、だから…」

『越智君と一緒に住みたいと思ってるの』という言葉が喉の奥に引っかかって、なかなか言葉にならない

あたしの顔はどんどんと熱を帯びて、まるで顔から炎を出しているみたいに熱かった

「陽菜、落ち着きなさい。もしかして大樹君以外で、付き合っている人がいるの?」

ママがあたしの手にそっと掌を乗せた

あたしは顔を上げると、コクンと頷いた

「一緒に住みたいの」

「そう、いいんじゃない」

「え?」

あたしは顔をあげると、ママを見つめた

「いいの?」

「反対したほうがいい?」

「ううん。反対して欲しくない」

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