君を愛す ただ君を……

あたしはホッとして、紅茶で口の中を潤した

「でもパパには内緒よ。絶対に反対するから」

「あ…うん。大ちゃんと婚約してるのに…ごめんなさい」

あたしはペコっとママに頭をさげた

「ただの口約束じゃない。それにきちんと婚約してたんなら、さっさと結婚させてるわよ」

ママが立ち上がると、缶に入っているクッキーを出してきた

「大樹君もママも、陽菜がずっと越智君を忘れられないんじゃないかって心配してたのよ。誰かと恋愛してるようには見えないし、仕事一本で突き進んじゃって。仕事のできる女って、男に煙たがられるでしょ？　でも、陽菜に良い人がいるなら良かった。ちゃんと恋愛してたのね」

ママが幸せそうに微笑んだ

「…で？　お医者さん？　それとも患者？」

ママが目を輝かせて質問してきた

あたしは肩身を狭くすると、俯いた

「研修医」

「もちろん将来有望なんでしょうね？」

「そのぉ……ママ、ごめんなさいっ！」

あたしはテーブルに額をぶつけんばかりに、頭をさげた

「え？　は？　なに？　妊娠でもした？」

ママが驚いた声をあげながら、驚いて立ち上がった

「違うよっ。その…一緒に住む人って…あのぉ」

あたしのぎこちない笑顔を見て、ママが椅子に座りながら失笑した

「越智君なのね」

呆れているのか…「やっぱりね」と思っているのか

ママが口を緩めて笑っている

クッキーを口に放り込んだママが、紅茶を飲んだ

「どこで再会したの？」

「病院で。越智君が研修医で来たの」

「越智君のお母さんは平気なの？　また凄い剣幕で来られても困るわよ？」

「離婚したんだって。お母さんは越智君の妹を連れて実家に帰っちゃったって。越智君は今、一人暮らしをしてて…」

「良かったわね。越智君がまだ独身で！」

あたしはにっこりと笑うと、力強く頷いた