君を愛す ただ君を……
「こういうの…いいね」

越智君が棚の上に並んで置かれている二人の携帯とピッチを見て、嬉しそうに微笑んだ

「ううっ、さみぃ」

上半身裸の越智君は身震いをすると、両腕を擦りながらクローゼットのほうにぴょんぴょんと跳ねながら進んでいった

あたしも並んでいる携帯に目を移動した

越智君の携帯とあたしの携帯が横に置いてあった

幸せな光景だね

あたしのピッチが光ると、ブーブーとバイブ音が鳴った

越智君の気がついたのか、振り返ると「俺?」と聞いてくる

「ううん、あたしのピッチ。軽部先生からだ…どうしたんだろう」

あたしはピッチを手に取ると、電話に出た

「もしもし、涼宮です」

『すぐに来てちょうだい。あの男をどうにかしてよっ!』

なかば叫ぶように言葉を出す軽部先生に、あたしは首を傾げた

「あの男?」

『あなたの親戚の男よ! 絶対安静なのに、ちょろちょろと病院内を歩き回って、迷惑してるの』

「えっと大ちゃんが?」

『看護師が目を離すと、病院を抜け出そうとするのよ。一晩だけで4回目よ。早く来て、どうにかして』

ブチっと電話の切る音がすると、電子音が聞こえた

あたしが顔をあげると、越智君が肩を揺らして失笑していた

「もしかして聞こえてた?」

「うん。岡崎らしい。あんなに慌ててる軽部先生も初めてで面白い」

「着替えて、病院に行かなくちゃ」

あたしはベッドから出ると、ベッドの脇に持ってきておいた旅行鞄に手を伸ばした

「一緒に病院に行こう」

「え? だって越智君が出勤するには早すぎるよ?」

「そうでもないよ。いつも6時から7時くらいに着くように行って、いろいろと資料とかカルテとかを見てるから」

「真面目な研修医さんだこと」

「俺は何でも真面目だろ?」

「そうだね」

あたしは越智君の顔を見て、にこっと微笑んだ
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