君を愛す ただ君を……
あたしと越智君は、駐車場でキスをしてから別れた

越智君は、従業員用の出入口に向かって、あたしは表の通用口に向かった

救急医療センターの入り口の前で、見覚えのある高校の制服を着た男の子が立っていた

頭を上げたり、さげたり…横に振ったりと、中に入るのをためらっているかのように見えた

金髪の髪をガシガシと掻き、耳についているたくさんのピアスがじゃらじゃらと揺れている

「中に入らないの?」

あたしは高校生の真後ろに立つと、質問してみた

ぐるっと勢いよく振り返った男の子は、ぎょっとした顔をすると、視線を上にする

まわりには誰もいないのを確認すると、またあたしの顔に視線が戻ってきた

男の子はカラーコンタクトをしているみたいで、緑色の瞳だった

ぱっと見は、近寄りがたい雰囲気のある子だけど…目がすごく純粋そうに潤んでいる

「もしかして岡崎先生のお見舞い?」

「はあ? なわけねえだろ」

ツンと横を向いた男の子が、不機嫌そうに言葉を吐き出した

「なんだ…大ちゃんの高校の制服だったから…てっきり大ちゃんに会いに来たのかと思ったのに」

あたしは唇を尖らした

「あんた…岡崎の知り合い?」

「うん。身内」

「み…身内? あ、もしかして嫁さんとか? マジで? ああ…」

違うけど

従兄だけど

あたしは突っ込みしようにも、男の子が勝手に勘違いして、くねくねと身体を動かし始めたので、何も言えなくなってしまった

「岡崎の怪我、たぶん俺のせいなんだ」

『たぶん』?

「君のせい?」

「俺、ツルンでるヤツらと縁を切りたくて…岡崎に相談したんだ。必ず話をつけてきてやるって…んで、ツルンでるヤツらが、病院送りにしてやったって電話がきて…」

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