君を愛す ただ君を……

「大輔…どうしてここにいるのか、わからないけど。さっさと帰りなさい」

軽部先生が、低い声で男の子に言い放った

男の子は、軽部先生を睨んでから、大ちゃんに近づいていった

「俺も、先生のベッドまで手伝うよ」

ぼそっと言うと、男の子は越智君の反対側にまわって大ちゃんの身体を支えた

「大輔、ごめんな。もっとあっさりと交渉できるかと思ったんだが…」

「いいっすよ。俺、嬉しかった。誰も、俺のこと真剣に考えてくれる先生なんていなかったから。先生に、『お前はお前だろ』って言ってくれたときはすげえ嬉しかったんすよね」

大輔君が、嬉しそうにはにかんだ

「岡崎って意外と良い先生だよな」

越智君が、にこっと笑って大輔君に微笑んだ

「え？」

大輔君が、越智君の顔を見て不思議そうな表情になった

「俺も、岡崎の教え子だよ。陸上部で世話になったんだ」

「嵐のように入部して退部してったけどな…て『岡崎先生』って言え」

大ちゃんの言葉に、越智君と大輔君が声をたてて笑った

「アナタ、愁と付き合いが長いの？」

すっとあたしの隣に立った軽部先生が質問してきた

大ちゃんの横顔をから、あたしは軽部先生に視線を動かした

「同じ高校でした。でも付き合いは軽部先生ほど長くないと思います。越智君と過ごした時間は、濃厚だったけど…時間にしたら、ごくわずかな時間だったと思います」

「でも付き合ってるんでしょ？」

あたしは軽部先生に微笑んだ

「ちゃんと付き合い始めたのは、つい最近ですよ」

「え？」

軽部先生が驚いた声をあげた

「だって…愁が、ずっと想ってる人がいるって」

「いろいろあって、７年間、ずっと別々に生活してきましたから」

「完敗ね。アナタたちの絆が強すぎて、私の入る隙がないのね」

軽部先生が肩を持ち上げると、口を曲げた