君を愛す ただ君を……
常連になる大ちゃん
月日は流れ、あたしは愁一郎と初めて過ごすクリスマスに、胸をトキメかせていた

一緒に住み始めて7カ月

付き合い始めてから、もうすぐで8カ月になる

今夜は、愁一郎の実家に一緒に帰ろうという話になっていた

愁一郎のお父さんに会うのは、何年ぶりになるのだろう

7年? 8年? もうそれくらいになる

電話では、あたしと付き合っているという話は、愁一郎がしているみたい

今夜は、お父さんと、お父さんの恋人…それからあたしたちでパーティをするみたい

「主任、終わりそう?」

「あたしの質問を取らないで!」

手術着の上に、白衣を引っ掛けている愁一郎が、ナースステーションのカウンターに肘をついて、あたしに声をかけてきていた

「越智先生こそ、終わりそう?」

「あと3時間くらい過ぎれば…」

愁一郎が苦笑した

「んもぅ」

あたしが頬を膨らませると、愁一郎が大きな手であたしの頭をポンポンと叩いた

愁一郎との仲は、大学病院中、もう知れ渡っている

最初の頃は、『婚約者から奪った悪女』っていう噂が流れてた

「親父には遅れるって電話、入れておくよ」

「お願いね」

あたしはすぐ横で鳴りだした内線の用の電話に手を伸ばした

「はい、第一外科の涼宮です」

『良かった。涼宮主任が出てくれて。すぐにセンターのほうに来て』

軽部先生の慌てている声が、電話の向こうからした

「え? あ…どうしたんですか?」

『もう夜勤と交代してるんでしょ?』

「ええ。もう交代してますよ。書類だけ書き終えたら、帰ろうと思ってて…」

『すぐに来てっ。いいわね。すぐよ』

「はい」

あたしは電話を切ると、首を傾げながら席を立った

「どうした?」

愁一郎が、不思議そうな顔をした

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