君を愛す ただ君を……
処置室のドアが開くと、手術着を着ている軽部先生が出てきた

手や着衣が、真っ赤な血で染まっていた

「涼宮主任、来て。見て欲しいの」

「え?」

あたしは大輔君から離れると、軽部先生の後をついて処置室に入った

奥のカーテンレールまで進むと、軽部先生がシャッとカーテンを開けた

海東君と目が合った

悲しげな瞳で、あたしを見ている

あたしも…たまにそんな顔をする

言葉が出なくて、でも何か言わなくちゃいけないときにあたしも同じような表情をする

遺族に対して……

あたしはゆっくりと視線を動かして、ベッドに横たわっている人に目を向けた

ぐったりと横になっている青白い顔が、大ちゃんにそっくりだった

「ごめんなさい。手はつくしたの」

軽部先生が静かな声で囁いた

「病院に運ばれたときにはもう心肺停止状態で、出血も酷かったんだ」

海東君が、白い布を大ちゃんにそっくりな男性の遺体にかけた

「あ…えっと、この人、大ちゃんにそっくりなだけだよ。きっと携帯に連絡すれば、大ちゃんがでるよ」

あたしは首にかけているピッチを手に取ると、大ちゃんのアドレスを探した

軽部先生が、あたしの腕を掴むと首を左右に振った

「この人は、間違いなく岡崎 大樹よ」

「どうして…違う。大ちゃんじゃないっ。絶対、そっくりさんだって」

軽部先生が、白い布を剥がして大ちゃんの左手薬指についているリングを見せた

「これを見て」

「指輪?」

軽部先生が次に、軽部先生のネックレスの先についてるリングを見せてくれた

「あ……おそろい? え? つ、付き合ってたんですか?」

軽部先生と大ちゃんが付き合ってた?
< 202 / 507 >

この作品をシェア

pagetop