君を愛す ただ君を……
「先月ね。5度目のデートで指輪を貰ったの。二人の年齢が年齢だし…年明けには籍を入れようか…なんて、話してたのに」

ううっと軽部先生が口元を押さえると、涙をこぼした

「ごめんなさいっ」

軽部先生が、血だらけの手袋を外すと、処置室の外に出て行った

「大ちゃん…死んじゃ、だめじゃん。やっと恋人ができたのに、死んでる場合じゃないのに」

あたしはぼそっと呟くと、大ちゃんの足首を掴んでぐらぐらと揺らした

冷たい…

大ちゃんの身体、すごく冷たいよ

どうして?

あたしは掌を見つめた

「冷たすぎない?」

「軽部先生が…1時間ずっと蘇生を試みていたんだ。他の先生が止めに入るなら、ずっとおお泣きしながら。俺、びっくりしたよ。あんなふうに取り乱す、軽部先生に」

「大ちゃん……なんで…」

「たとえ虫の息でここで運ばれていたとしても、たぶん助からなかったと思う。肋骨が肺に刺さってた。腕の骨は粉々で…足の動脈が破裂してたんだ」

「…そっか。大ちゃん、だめじゃん。恋人がいるのに、程々にしなくちゃ」

あたしは大ちゃんの脛を白い布ごしに擦った

「いくら…生徒のためって言っても、加減っていうものがあるのに」

あたしは目から涙を流すと、大ちゃんの足をペチンと叩いた

視界が涙で白く歪んだ

その場に疼くなると、声をあげて泣いた

どうして…大ちゃんが、あたしより先に死んでるのよ

大ちゃん、ずっと亡くなった恋人を心の隅で引き摺ってた

やっとそれから解放されて、軽部先生と恋愛を始めたんじゃないの?

それなのに…大ちゃんみたいに想いを引き摺る人を増やしてどうするのよっ

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