君を愛す ただ君を……
「もう…大ちゃんの馬鹿ぁ」

あたしは大ちゃんの胸を叩くと、大ちゃんの腕を握った

すっと海東君がその場から離れていくのがわかった

何分、そこにあたしはいたのだろうか

ピッチが鳴る音に身体をびくつかせると、あたしはピッチを耳にあてた

「もしもし…」

「陽菜? 泣いてるの?」

愁一郎の優しい声が、耳に入ってきた

「あ…えっと、うん」

「どうした? 何かあったの?」

「ごめっ……あたし、今日、愁一郎の実家に行けない」

「え? 何で? 急な交代があったの?」

「ちがっ、大ちゃんが…」

「岡崎が?」

「死んじゃった」

「…えっ?」

愁一郎が電話の向こうで、息が詰まったのがわかった

ガサガサと何か動く音が聞こえた

「岡崎が…死んだ?」

信じられないと言わんばかりの声がする

「今、センターにいる。大ちゃんの身体が冷たくて…運ばれたときにはもう心肺停止状態だったんだって」

「今すぐ、そっちに行くから」

愁一郎が、通話を切断した

ツーツーという電子音を耳にすると、あたしはそのまま手を下におろした

大ちゃん、起きてよ

ほんとは、生きてるんでしょ?

冗談だよって笑って、起き上がるんでしょ?

あたしたちを驚かしてやろうとかって、思って変なことしてるんじゃないの

「ねえ…大ちゃん、目を開けてよ」
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