君を愛す ただ君を……
あたしは大ちゃんの頬に手を触れた
「おそろいのリング、買ったんでしょ? 結婚するつもりでいたんでしょ? なんで、こんな痛い思いをするの?」
もう返事をしない大ちゃんに問いかける
冷たい身体が、大ちゃんがもう目を覚まさないと訴えている
冗談なんかじゃないってあたしに、嫌ってほどわからせてくる
「陽菜っ…大丈夫か?」
カーテンレールが動く音がするなり、あたしは顔をあげた
呼吸を激しく乱している愁一郎が、あたしを見つめていた
「大ちゃんね…軽部先生と結婚するつもりでいたんだって」
「え?」
愁一郎が驚いた声をあげた
「岡崎と軽部先生が?」
「うん。おそろいの指輪をしてたの。なのに……こんな結果になるなんて。大ちゃんがあたしより先に死んじゃうなんて、信じられないよ」
愁一郎があたしの後ろで、中腰になるとあたしの肩にそっと手を置いた
「陽菜、ここは処置室だから。場所を移動させないと」
「移動? どうして?」
「岡崎はもう亡くなったんだろ? 安置室に移動しよう。ここは治療をするべき室内だ」
「大ちゃんにもう治療の必要がないって言いたいの?」
あたしは愁一郎のほうに振り返って大きな声をあげた
「脈も無くて、瞳孔が開きっぱなしの人間に、どう治療すればいい? 心拍停止、脈拍ゼロ…治療する価値があるか?」
あたしは愁一郎の頬を平手で叩いた
「大ちゃんは生きてた…のに……」
「わかってる。ここに運ばれてくる人間はみんな生きてるんだ。早急な手当てを必要としている。だから場所を一つでも開けておく必要があるだろ」
「だって…だって…」
愁一郎が、あたしの肩を抱きしめた
「陽菜の気持ちは、痛いくらいわかってる。俺だって信じたくない気持ちでいっぱいだ。でも俺は医師でもある」
あたしは唇を噛みしめると、しっかりと立ち上がり、大ちゃんの顔に白い布をかぶせた
「…あたし、大ちゃんのご両親に電話してくる。大ちゃんが安置室に入るところ、見たくない」
あたしはくるっとまわると、処置室を飛び出した
「おそろいのリング、買ったんでしょ? 結婚するつもりでいたんでしょ? なんで、こんな痛い思いをするの?」
もう返事をしない大ちゃんに問いかける
冷たい身体が、大ちゃんがもう目を覚まさないと訴えている
冗談なんかじゃないってあたしに、嫌ってほどわからせてくる
「陽菜っ…大丈夫か?」
カーテンレールが動く音がするなり、あたしは顔をあげた
呼吸を激しく乱している愁一郎が、あたしを見つめていた
「大ちゃんね…軽部先生と結婚するつもりでいたんだって」
「え?」
愁一郎が驚いた声をあげた
「岡崎と軽部先生が?」
「うん。おそろいの指輪をしてたの。なのに……こんな結果になるなんて。大ちゃんがあたしより先に死んじゃうなんて、信じられないよ」
愁一郎があたしの後ろで、中腰になるとあたしの肩にそっと手を置いた
「陽菜、ここは処置室だから。場所を移動させないと」
「移動? どうして?」
「岡崎はもう亡くなったんだろ? 安置室に移動しよう。ここは治療をするべき室内だ」
「大ちゃんにもう治療の必要がないって言いたいの?」
あたしは愁一郎のほうに振り返って大きな声をあげた
「脈も無くて、瞳孔が開きっぱなしの人間に、どう治療すればいい? 心拍停止、脈拍ゼロ…治療する価値があるか?」
あたしは愁一郎の頬を平手で叩いた
「大ちゃんは生きてた…のに……」
「わかってる。ここに運ばれてくる人間はみんな生きてるんだ。早急な手当てを必要としている。だから場所を一つでも開けておく必要があるだろ」
「だって…だって…」
愁一郎が、あたしの肩を抱きしめた
「陽菜の気持ちは、痛いくらいわかってる。俺だって信じたくない気持ちでいっぱいだ。でも俺は医師でもある」
あたしは唇を噛みしめると、しっかりと立ち上がり、大ちゃんの顔に白い布をかぶせた
「…あたし、大ちゃんのご両親に電話してくる。大ちゃんが安置室に入るところ、見たくない」
あたしはくるっとまわると、処置室を飛び出した