君を愛す ただ君を……
「全く悪い子だね。軽部先生は……そんなふうに言われたら、断れないでしょ」
岡崎さんが、私の前に立つとそっと髪に触れてきた
「僕、もう随分と女性とそういうことをしてないから、下手だよ?」
「随分って?」
「そうだねえ。10年くらい?」
岡崎さんが私を腕の中に包み込んでくれる
男の人の臭いがした
さっきの会社員の男とは違う
あの男は、体臭を隠そうと鼻がもげそうなにおいの香水を纏っていた
なんか、安心する
岡崎さんのにおいに、精神安定剤が含まれているのかしら?
「嘘つきね」
「嘘じゃないよ。本当に…してないんだ」
「涼宮さんと婚約してた男が何を言うの? わかりきった嘘なんて、いらないのに」
「陽菜とはしてないよ。陽菜はずっと越智に片想いしてたし、僕も…」
岡崎さんが言いかけて口を止めた
「忘れらない人がいる、のよね……ごめんなさいっ」
私は、岡崎さんの胸を押し返すと離れた
急に身体に寂しさと孤独が襲ってくる
私はスプリングコートと鞄を掴むと、玄関に身体を向けた
「軽部先生っ?」
状況把握ができていない岡崎さんが、両手を広げたまま畳の上に立ちつくしていた
私は岡崎さんの顔を見ながら、脳内には一瞬だけ見た写真立ての二人がチラついた
楽しそうに笑っている二人の邪魔なんてできない
「やっぱり帰ります」
「あ、じゃあ…送るから」
「ああっ、いいの。気を使わないで。怪我人は休んで。私は一人で平気だから」
私は赤いハイヒールに足を突っ込んだ
岡崎さんが、私の前に立つとそっと髪に触れてきた
「僕、もう随分と女性とそういうことをしてないから、下手だよ?」
「随分って?」
「そうだねえ。10年くらい?」
岡崎さんが私を腕の中に包み込んでくれる
男の人の臭いがした
さっきの会社員の男とは違う
あの男は、体臭を隠そうと鼻がもげそうなにおいの香水を纏っていた
なんか、安心する
岡崎さんのにおいに、精神安定剤が含まれているのかしら?
「嘘つきね」
「嘘じゃないよ。本当に…してないんだ」
「涼宮さんと婚約してた男が何を言うの? わかりきった嘘なんて、いらないのに」
「陽菜とはしてないよ。陽菜はずっと越智に片想いしてたし、僕も…」
岡崎さんが言いかけて口を止めた
「忘れらない人がいる、のよね……ごめんなさいっ」
私は、岡崎さんの胸を押し返すと離れた
急に身体に寂しさと孤独が襲ってくる
私はスプリングコートと鞄を掴むと、玄関に身体を向けた
「軽部先生っ?」
状況把握ができていない岡崎さんが、両手を広げたまま畳の上に立ちつくしていた
私は岡崎さんの顔を見ながら、脳内には一瞬だけ見た写真立ての二人がチラついた
楽しそうに笑っている二人の邪魔なんてできない
「やっぱり帰ります」
「あ、じゃあ…送るから」
「ああっ、いいの。気を使わないで。怪我人は休んで。私は一人で平気だから」
私は赤いハイヒールに足を突っ込んだ